企業の人材育成に生かす「研修型ワーケーション」の事例──Work Educationがもたらすもの
Myoko Workation column
こんにちは、妙高ワーケーションセンターの竹内義晴です。
これまで、私が(個人的に)ワーケーションに関わるようになった経緯と、ワーケーション市場の課題、私たちが取り組んでいるワーケーションの「4つの目的」についてお話してきました。
ワーケーションの「4つの目的」とは、以下の内容でした。
さまざまな解釈があるワーケーション。それを分かりやすく、目的を明確にして進めるために、私たちはワーケーションに、まず「学び」の意味をつけました。つまり、企業研修ですね。
一方で、都市部の会議室でもできる内容なら、妙高においでいただく意味がありません。せっかく妙高においでいただくなら、妙高でしか体験できない「妙高ならでは」のプログラムを作りたいと考えました。
今回は「Work Education:社員の人材育成」について、これまで取り組んできた事例をご紹介します。
事例1:不確実性が高いビジネス環境の「変化への対応力」を自然から学ぶ
1つ目の事例が、産業人材の育成に実績のある日本能率協会マネジメントセンターと、妙高市にある日本で唯一のアウトドア専門学校である国際自然環境アウトドア専門学校と協働開発したラーニングワーケーション「here there」です。
不確実で正解がない現代は、VUCA(ブーカ)時代と言われています。VUCAとは、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」のこと。
近年、日本のビジネスシーンには、少子高齢化をはじめ「解決方法はこれですよ」と簡単には言えないさまざまな課題があります。それに加えて、2020年から始まったコロナ禍によって、現代は未来の予測が全くできない不確実な環境です。
「不確実な環境」といえば、天候がそうであるように、自然も時々刻々と変化する環境です。
here there妙高は、ナビゲーショントレッキングをはじめとした自然体験の中から、不確実なビジネス環境の「変化への対応力」を学ぶことができるプログラムの事例です。コミュニケーションやリーダーシップ、チームビルディング、リスク管理、心理的安全性など、不確実性の高い現代のビジネス環境に必要なマインドや対処の仕方を、実体験を通じて「生きた学び」として得ることができます。
ここでいう「生きた学び」に影響を与えているのが「比喩体験」です。比喩体験の詳細はまた改めますが、一言で言うと「〇〇のときは、□□が大事だ」のように、知識を直接伝えるのではなく、ビジネスとはまったく異なるアウトドアでの体験が、まるで「たとえ話(メタファー)」のように機能し、「なるほど! これは、仕事でいうと〇〇だな」「そうか! 不確実な環境では、このように仕事を進めていけばいいのか」のように、ビジネスで大切なことを、参加者自身が「気づく」あるいは「発見する」働きがあります。
外的な知識や情報ではなく、内的に起こった気づきや発見は、参加者自身の納得感や実感として蓄積され、ビジネスの現場で生かすことができます。
なお、本プログラムは、新入社員研修などでよくあるような「サバイバル研修」のようなものではありません。人材育成とアウトドアの専門家とともに、気づきや発見が起きやすいようにデザインした事例です。良質な思考を促すため、普段関わることのない他社や地域の人たちと焚火を囲んで行う価値観交流や、問いかけや振り返り、内省の時間を多く設けています。
モニターツアーでは、参加者から、次のような声が寄せられました。
- 三叉路でどちらに進むべきか分からなくなった時。今ある情報をもとに仮説を立て、どうなったら正解/不正解なのか、チームで合意を持って進んだ。正解がはっきりしないビジネスシーンでも「こうやってみて、こうなればgood」というような仮説検証をチームで合意しながらやっていくことは本当に大切だと思った。(20代女性・イベント企画)
- トレッキング、キャンプ。生命身体への影響度が高く、自分で直接的に結果責任を持たざるをえない点で学びがあった。(40代女性・法律事務所・CSR部門)
- 仮説検証を行い、判断すること。自然は無常である。
地図とコンパス、現場に行けば状況も変わることを体験として教えていただきました。(40代男性・広告・代表取締役)- 見知らぬ人とのアウトドア体験を通して、意思決定速度の重要性と意思表示の重要性を感じた。また、大自然に触れることで自分の生活圏にある自然(人口建造物含む)からも何かしらのメッセージを受け取れるのかもしれないと考えることができた。(30代男性・出版・DX推進)
そのほか、詳しい内容・事例は、【妙高モニターツアー】「想定外のある大自然の中で、生きるマインドを養う」開催報告をごらんください。
事例2:テレワーク時代のコミュニケーションとチームワークを学ぶ
2つ目の事例は、テレワーク時のコミュニケーションセミナーと、地域の資源を使ってチームワークを体感できる、研修型ワーケーションです。
個人的なお話で恐縮です。わたしは、妙高を軸にワーケーションの事業開発をしたり、NPO法人を経営したりしながら、東京のIT企業にも所属しています。「週2日複業社員」「フルリモート」「2拠点ワーク」という働き方です。
2017年からテレワークを実践しており、「テレワークにおけるオンラインコミュニケーションのコツ」を、実践の中から体得してきました。
2020年の春より、感染が拡がった新型コロナウイルス感染症。それにともない、多くの方が強制的に、在宅勤務やテレワークを余儀なくされました。そこで、4年間で体得してきたテレワークコミュニケーションのコツについてお話しした研修型ワーケーションの事例です。
2日目は、「チーム de そば打ち」と題し、妙高市で栽培されているそばの在来種「こそば」を使ってそば打ち体験を行いました。
本来であれば、「チームワークとは何か」についてお話をし、チームを組み、役割を決めてそば打ち体験できれば、もっともチームビルディングに役立つ内容にもできました。しかし、コロナ禍のいま、ソーシャルディスタンスを確保した内容としました。
それでも、まったく同じ材料で打ったにもかかわらず、出来上がったそばには一人ひとりの個性があらわれたり、「テレワークになってから、仕事はできるけれど、コミュニケーションが減っていた。リアルな協働体験は、不足していたコミュニケーションを埋めることができて、とても良かった」といった声が聞こえてきたりと、チームづくりに効果的だった事例です。
ワーケーションに「学び」を
一昔前、社員間のコミュニケーションや福利厚生を目的に、社員旅行が多く行われていました。温泉に入ってお酒を飲む。そして、みんなで楽しむ……それはそれで、楽しい体験でした。
けれども、個が尊重される今の時代に、単に福利厚生が目的だけの、とにかく全員で行く社員旅行では、企業としては投資しにくいのが実際のところではないでしょうか。
一方で、「企業研修」「人材育成」といった目的や、会議室では得られない「学び」があれば、企業としては投資となります。特に、不確実性が高い現代社会ではみんなで問題を解決していく必要があります。そういう意味では、社員のコミュニケーションやチームワークが、とても重要です。
その研修スタイルは、3泊4日程度の日程で「ガチ」に行うものから、1泊2日程度で、交流を含みながら行うものまでさまざまではないかと思いますし、一社一社の課題やニーズに合わせて、組み立てていくものだと思っています。
私たちは、御社の「学び」が最適なものになるように、一緒に組み立てられたらいいなと思っています。ここにご紹介した事例が、何らかのお役に立てば幸いです。
なお、ご提案できる企業研修の内容は、コミュニケーションや組織作り、チームビルディング、これからの働き方などの、企業の人材育成に関わるものから、ワーケーションや地域複業をはじめとした関係人口づくりなど、自治体に関する内容まで、多様なコンテンツに対応できます。詳しくは、竹内義晴の経歴も合わせてごらんください。
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越境学習とは、普段勤務している会社や職場を離れ、まったく異なる環境に身を置くことから生まれる「新たな視点」によって、会社や職場では得ることができない、深い気づきや学びを得る学習のことです。
確実性が高く、正解がないいまの時代に、会議室では得られない「新たな学び」の機会を一緒に創りませんか?