企業が「ワーケーションを導入」するときに意識したいポイントとは?

Myoko Workation column

妙高ワーケーションセンター ワーケーションコーディネーターの竹内義晴です。

「ワークとバケーションの組み合わせ」といわれるワーケーション。企業にとっては有給休暇の促進や帰属意識の向上、従業員にとっては多様な働き方の実現やリフレッシュ、地域にとっては平日の移動需要の創出や交流人口・関係人口の増加など、それぞれの立場で、それぞれの目的により、取り組みがはじまっています。

一方で、「ワークとバケーションの組み合わせ」というイメージから、働き方が具体的にイメージできずに、企業にとっては「どのように推進すればいいのか?」とお困りの、人事や総務の方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、この記事では、企業で「ワーケーションの導入」を検討するときのポイントについてみていきます。

なお、筆者は新潟県妙高市にて、地域側の立場でワーケーションの事業開発を行っています。また、複数の企業に所属し(複業)、都市部と地域を行ったり来たりしながら、フルリモートワークを4年以上(記事執筆時点)行ってきた経験があります。

企業がワーケーションを推進するときにもっとも重要視すべきポイント

まず、企業がワーケーションを推進するときに、もっとも重要視すべきポイントは、ワーケーションを「特別視しないこと」です。

「ワーケーション」という新しい言葉や、「ワークとバケーションの組み合わせ」というこれまでにない働き方を考えたとき、ワーケーションを推進するために「なにか、特別なことをしなければならないのではないか」とお考えの人事や、制度設計をされるご担当者の方も多いのではないかと思います。そう思われるのも当然です。

一方、ワーケーションは「多様な働き方、学び方」であり、「時間や場所の制約のない働き方」のため、「テレワークの延長」にあります。つまり、「働くために必要な制度」としては、ワーケーションもテレワークも、あまり大きな違いがありません

実際、観光庁が提供している「新たな旅のスタイル 企業版」で示されている「導入するポイント」で書かれている内容は、基本的には「テレワークを導入するポイント」であり、その参照元もテレワークを導入するためのガイドラインです。

つまり、ワーケーションを推進するためには、「ワーケーションのための特別な制度」は必要なく、「オフィス以外で働く制度(つまり、テレワークですね)」をつくることができれば、結果的に、社員のみなさんがワーケーションを行うことができるようになります。

ですから、ワーケーションを特別視せずに、「時間や場所の制約のない、柔軟な働き方を実現する制度をつくる」という視点に立っていただくとよいのではないかと思います。

ワーケーションではなくテレワークを推進すればよい実例

冒頭にも軽く触れたように、わたしは妙高市のワーケーション事業開発に携わるかたわら、サイボウズ株式会社というIT企業でも働いています。所属は東京ですが、住まいは新潟で、「フルリモート」「2拠点ワーク」という働き方です。

実は、サイボウズでは100人100通りの働き方を推進しています。そのため「しばらく実家で仕事をする」「1週間、家族と観光地に滞在しながら仕事をする」といった働き方をしている社員は少なくありません。一方、「働き方の制度」はあっても、「ワーケーションに関する特別な制度」はありません。詳しくは推進すべきなのはワーケーションではなく、「多様な働き方」ができる制度・風土づくりだった(サイボウズ式)をご覧ください。

このように、時間や場所の制約が少ない柔軟な働き方ができれば、ワーケーションに関する特別な制度はなくても、ワーケーションができるようになります。

「何のためにワーケーションを推進するのか?」は明確にしよう

ワーケーションに関する特別な制度は必要ない一方で、企業がワーケーションを推進する際、「何のためにワーケーションを推進するのか?」は、ある程度明確にしたほうがいいでしょう。

なぜなら、一言で「ワーケーション」といっても、その範囲は多種多様で、「何を推進するか」を明確にしたほうが、どんな取り組みをしていくかが具体的になるからです。

たとえば、これは、わたしたち妙高ワーケーションセンターがワーケーションの取り組みをはじめる際に、ワーケーションを自分ごととして理解するために分類した4つの類型です。

これを見るだけでも、「企業研修や合宿型なのか」「社員のストレス改善やリフレッシュを目的にするのか?」「個々人の働き方を柔軟にするのか?」「地域との関わりをつくることで、社員一人ひとりのやりがいを創出するのか?」など、その目的やテーマが多様であることがお分かりいただけるかと思います。

もちろん、すべて取り組むのもいいかもしれませんが、「どのあたりから攻めていくか」を最初に決めておいたほうが、企業におけるワーケーションは、推進しやすいのではないかと思います。

もっとも取り組みやすいのは「合宿研修型」

とはいえ、その範囲があまりにも広いと「どこから手をつけたらいいか分からない」というのも、正直なところからもしれません。

それならば、先ほどお示しした4つの類型の上半分にある合宿研修型(「社員の人材育成」か「社員の癒し」)から取り組むのはどうでしょうか? なぜなら、研修型の取り組みなら。働き方の制度変更は必要なく、比較的気軽に取り組むことができるからです。

また、「多様な働き方の実現」といった内容は、社員のエンゲージメントを高める上で、とても大切な施策ではあるものの、その効果を定量的に測定するのが難しいため、推進するにあたり、社内の理解を得ることが難しい場合もあります。しかし、人材育成などの目的が明確で、「その地域にいかなければできない学びの体験」といった明確な理由があれば、社内の稟議も通しやすいでしょう。

なお、妙高ワーケーションセンターでは、コミュニケーションやメンタルヘルスなど、実務的な知識やスキルを身につけられる研修にも対応できるほか、地域ならではの体験を通して、チーム作りやストレス改善に役立つプログラムを、ご要望に応じて組み立て、ご提案しています。

制度をつくるなら「テレワークの導入」から

ワーケーションに関する何かしらの制度を導入したい場合は、「ワーケーション」よりも「テレワーク」に意識を向けるとよいでしょう。

コロナ禍の拡がりで、多くの企業が在宅勤務の導入をはじめました。ワーケーションは「在宅」ではなく「それ以外の場所」で働くという違いがあるぐらいで、「テレワーク」という意味では、あまり大きな違いはありません。

まずは、オフィス以外の場所で働けるようにする。それから、働く時間や場所の範囲を徐々に広げていく……そのような形で進めるのが、企業にとってはもっとも負担がなく、実務的な制度になると思います。

企業でワーケーションの導入を考えるなら「実務に役立つ」ことを

ここまで、企業で「ワーケーションの導入」を考えるときのポイントについてみてきました。

ワーケーションのような、新しい考え方や取り組みを、企業で行う場合はさまざまなハードルがある場合があります。それだけに、担当者個人が、「今後は、こういった取り組みが社内必要だ」と感じていても、それを社内に取り入れていくのは難しいものです。

一方で、それが、「必ずしも特別なことではないんだ」と理解できれば、具体的な取り組みが見えやすくなるかもしれません。また、合宿型研修のような、取り組みやすいところから取り組み始めれば、少しずつ、でも、確実に、社内に浸透しはじめることができるのではないかと思います。

人事や制度設計をされているみなさんの、「こんな会社にしていきたいな」が実現されて、社員一人ひとりのみなさんが、自分らしく働けるようになるようにしていくこと。その、「多様な働き方、学び方」をできるようにしていくことが、ワーケーションの本質なのではないかと思います。

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