「遊んで、働く」から企業の「価値創造」へ──2022年 ワーケーション業界のいま

Myoko Workation column

こんにちは、妙高ワーケーションセンター ワーケーションコーディネーターの竹内義晴です。

コロナ禍の広がりで、多くの人が知ることになったワーケーション。2020年ぐらいから、各地でその取り組みがはじまりました。

妙高ワーケーションセンターは、2020年6月から活動をはじめましたが、以前と比較すると、少しずつですが業界の変化を感じることがあります。

この記事では、ワーケーション業界で感じる日常の変化や現場感をお話しします。

これまでの「ワーケーションのイメージ」

これは、Googleで「ワーケーション」というキーワードを入れて画像検索したものです。海辺で寝そべっている姿や、森の中でパソコンを広げるようなイメージのものがたくさん出てきます。

一般的には、ワーケーションといえば、こういったイメージではないでしょうか?

しかし、こういった写真のように外で仕事をしてみると……

以前、あこがれで2、3回、外で仕事をしたことがあります。ですが、太陽の光がモニターに映って見にくかったり、些細な風が肌に触れる感じが気になったりと、実際にやってみたら、仕事に集中できませんでした。

わたしの在宅勤務・テレワーク歴は10年以上になりますが、テレワークをするなら、体に合った机と椅子や快適な空調、安定した通信環境が重要だと思っています。

イメージが「遊んで、働く」から「企業目線」へ

Googleの画像検索のイメージが「レジャー」といったものが強かったワーケーションですが、最近は少し変わってきた感じがしています。それは、企業目線に変わってきていることです。

2022年7月、経団連は「企業向けワーケーション導入ガイド」を発表しました。導入ガイドには、こんな記述があります。

ワーケーションは経験者の満足度が高く、また、多様な地域への滞在機会の拡大につながり、観光の活性化や地方創生の実現に資する可能性をも秘めており、政府や地方自治体でも、施策の展開が活発に行われている。

一方で、勤務と休暇の組み合わせを前提とした働き方の新しい概念であり、休暇中の仕事の奨励や、仕事と余暇の混在を招くのではないかとの懸念や誤解から、企業における導入に慎重な見方も少なくない。

そこで、経団連は、仕事と休暇の明確な区分けを前提に、場所にとらわれない働き方の1つとして、ワーケーションをとらえ、導入におけるポイントと、整理すべき諸規程を盛り込んだ、企業向けのガイドを作成した。

出典:企業向けワーケーション導入ガイド | 一般社団法人 日本経済団体連合会

経団連がこのようなガイドを出すのは「企業における導入に慎重な見方も少なくない」としていることから、働き方改革や働き手のエンゲージメント向上にあたっては「企業における導入が大切」だと捉えているからではないでしょうか。

また、これは先日、矢野経済研究所が出したレポート「2022年版 地域を活性化させるワーケーション市場の実態と展望」の引用です。

ワーケーション(workation)とは、仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語で、休暇を過ごす環境に滞在しながら仕事をする働き方全般を意味する(※)。世間では「遊んで、働く」というイメージが先行しているが、有給休暇取得や地方創生を促進するといった日本の社会課題を解決するツールとして独自の発展をしている。観光庁ではワーケーションには「日常にない気付きや学び、交流が得られ、新たな価値創出や地域・社会の課題に取り組むなどのきっかけになるといった効果」も期待されるとし、その普及を促進している。このような国家戦略の潮流に乗り、ステークホルダーとなる企業の動向も多岐に渡るようになっている。そのようなワーケーション市場の実態を、実施主体である「企業」目線からとらえ、その結果をもってワーケーション市場の普及・拡大、そしてワーケーションを用いた地方創生の活性化の一役を担うことを目指す。
※前回版「注目されるワーケーション市場の実態と展望~地方創生を促進するニューノーマルな働き方~」による定義

出典:2022年版 地域を活性化させるワーケーション市場の実態と展望 | 株式会社矢野経済研究所

このレポートでも「ステークホルダーは企業」と書かれています。このことからも、ワーケーションの対象が企業目線に変わってきていると感じます。

企業では、時間と場所に縛られない働き方がより身近に

ところで、企業における働き方についてはどうでしょうか?

今まで、仕事と言えば「会社で行うもの」でしたが、コロナ禍により、在宅勤務やテレワークが広がりました。その結果「多様な場所で仕事をする」ことが、企業内でも定着しつつあります。

わたしの周囲を見回しても「○○へワーケーションしてきました」「○○にワーケーションしに来ています」といった声を耳にする機会がずいぶんと増えました。

また、「会社は都市部のまま、地方に移住する人」や、「週に3日、会社の仕事をしながら、移住先で地域の仕事を副業している人」、「しばらく実家で仕事をする人」など、これまで、企業で働いていたらまず不可能だった働き方をする人も増えてきました。

そういう意味では、ワーケーションという言葉が流行りだした2020年と比較すると、「遊びながら仕事」「仕事と休暇の組み合わせ」といったこれまでのイメージから、「時間と場所の制約がない多様な働き方」に変わってきており、企業における実践のしやすさにも、変化が表れてきたと言えそうです。

ワーケーションの「現場の変化」

働き方の変化といえば、プログラムを動かしているワーケーションの現場でも変化を感じています。

妙高ワーケーションセンターでは、親子ワーケーションを開催しています。「長期休みになると子どもたちがずっと家に居るから、仕事と子育ての両立が大変」という声を受けて、親御さんにはリフレッシュしていただきつつ、お子さんには、都市部ではなかなか出来ない体験をしていただくプログラムです。

2022年には、春と夏の2回、親子ワーケーションを開催しましたが、参加者の層に変化がありました。

春休み期間中(2022年3月)に開催した際は、今まで他の地域でも参加したことがある方など、以前より親子ワーケーションに強い関心を持っていた方々が比較的多かった印象です。また、フリーランスの方が多く、働く時間と場所の裁量がある方がほとんどでした。

一方、夏休み期間中(2022年8月)に開催した際は、「ワーケーションが初めて」という方々がほとんどでした。また、企業で働いている方が多く、テレワークやワーケーションのような働き方が、今までよりも企業で許容されはじめてきた、馴染んできたことを実感しました。

ワーケーションは「境を越えた学習の場」

ワーケーション業界の変化といえば「越境学習」という考え方が広がりつつあります。越境学習とは、所属やキャリアなど慣れ親しんだ普段の会社の中から少し離れて、地域という境界を越えて往来することで、新しい人との出会いや、会社以外の地域と行ったり来たりすることで、さまざまな学びを得ることです。

ここ数か月で、越境学習に関する書籍が出版されています。

ワーケーションが、企業における「学びの場」「価値創造の場」という認識になってきているようです。

ワーケーションは「価値創造」へ

ここまで、2022年に感じている「ワーケーション業界の変化」について見てきました。

ワーケーションについて、関西大学 社会学部教授の松下慶太さんはnoteの記事『改めてワーケーション2.0について説明してみる』で、次のようにおっしゃっています。

大きく言えば、これまで気晴らしや娯楽、レジャーのイメージであったレクリエーションだけではなく、語源に近い意味であるRe-Creationとして地域やそこでの過ごし方を「再創造」していくフェーズだと思います。

出典:改めてワーケーション2.0について説明してみる | 松下慶太 note

つまり、「娯楽や観光」から「価値創造」に変化していると言えるでしょう。ワーケーションで、どんな価値を創造できるのか? 妙高ワーケーションセンターは、これからも探求していきます。

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