多くの人が「できる」ワーケーションに──MYOKO WORKATION WEEKレポート

Myoko Workation column

妙高ワーケーションセンター ワーケーションコーディネーターの竹内義晴です。

2022年5月9日(月)~14日(土)にかけて、「MYOKO WORKATION WEEK」を開催しました。ワーケーションができる環境のご提供、参加者のみなさん同士の交流、地域課題や妙高の取り組みについてご紹介しました。ご来訪いただきましたみなさま、ありがとうございました。

この記事は、MYOKO WORKATION WEEKの開催レポートです。

MYOKO WORKATION WEEKを企画しようと思ったきっかけ

長かった冬が終わりかけの、3月のある日のことです。「1年の中でももっとも気持ちがよい春の妙高に、みなさんをお招きしたいな」──そんな気持ちが沸々と沸いてきました。

妙高は、とても雪が多く降るところです。特に、2022年の冬は大雪に見舞われ、もっとも多い時で3m86cmの積雪を記録するなど、この冬は「雪に閉ざされている」感覚でした。

それだけに、雪国に住む私たちにとって「春の訪れ」は、ただそれだけで心が沸き立つ感じがします。「春だね」と。

しかも、5月は木々が芽吹き始め、これまで、一面真っ白だった世界は、妙高山の麓から少しずつ、緑へと変わっていきます。そして、新しい芽をつけた木々の緑と、残雪の白と、輝くような青空とで作られた自然のグラデーション。この地に慣れ親しんでいるわたしたちにとっても、この季節の妙高は本当に美しいのです(画像は、よく晴れた日の妙高山)。

そんな、最高の季節の妙高に、「みなさまに、ぜひ、おいでいただきたい!」というのが、今回のイベントを企画した、もっとも大きなきっかけです。

加えて、「これからの働き方」として言葉は広がったワーケーション。それを、言葉のみならず、「それぞれの働き方、価値観に合った、多様な働き方・学び方ができるようにしたい」「取り組みを知っていただき、妙高に関わってくださる方を増やしたい」「実際に取り組んでほしい」……今回のイベントが、そんな機会になるといいな、と思いました。

当初は、「1泊2日ぐらいで、興味関心がある人たちと語り合えたらいいな」くらいに思っていましたが、「せっかくならば、1週間ぐらいやってみたら」という、妙高ワーケーションセンターのスタッフからの声を頼りに、「MYOKO WOKATION WEEKをやってみよう!」と相成ったのでした。

できるだけ多くの人が「実際にできる」ワーケーションに

企画するにあたり、働く時間や場所の裁量のある、ごく限られた一部の人たちだけではなく、できるだけ多くのみなさまが「実際にできる」ワーケーションにしたいと思いました。

多くのみなさまが実際にできるようにするためには、上司や同僚、仕事の関係者、あるいは家族から「遊んでいないで、ちゃんと仕事をしろ!」と言われないように、「ワーケーションに行くんですよ。妙高へ!」と自信を持って言えるようにしたいと思いました。

そこで、平日の日中は仕事に集中できるように、それぞれの事情に合わせたワークタイムとし、交流はお昼や夕方以降、週末に行う形としました。

また、1週間ほどの期間を設けましたが、参加者のみなさん同士が楽しく交流できるよう、5/12~14を集中日としてご来訪いただく形としました。

全体のスケジュール

MYOKO WORKATION WEEKは、以下の予定で行いました。

  • 5/9(月)
    フリー
  • 5/10(火)
    フリー
  • 5/11(水)
    フリー
  • 5/12(木)
    おしゃべり会「これからの働き方を語ろう」 & 懇親会
  • 5/13(金)
    おしゃべり会「妙高の現状とワーケーションの取り組み」 & 懇親会
  • 5/14(土)
    地域を知ろう & 大滝荘でそばと山菜の昼食

5/9~11は「ワークスペースとして」

5/9(月)~11(水)はフリーとしました。妙高ワーケーションセンターの拠点である、ハートランド妙高には、自由に使えるワークスペースがあります。数名の方がご来訪いただきました。

トピックとして、5/9(月)に日本ワーケーション協会 代表理事の入江真太郎さんが来訪されました。現在のワーケーション業界の状況や、これからについて、ざっくばらんに情報交換をしました。

5/12~14は「交流の機会」「地域を知る機会」として

5/12(木)~14(土)は、「交流の機会」「地域を知る機会」としました。

多くの方が5/13(金)~14(土)にご調整いただいたこともあり、5/12(木)は夜の交流会がメインでした。個人的なご参加だったためお写真は控えますが、長野市や妙高市など、どちらかといえば妙高市に近い方がご来訪いただき、妙高高原地区の飲食店にて交流会を開催。それぞれが抱いている、現在の仕事に対する課題感や、これからの方向性、地域のことなど、ざっくばらんにお話しました。

5/13(金)~14(土)は宿泊する形としました。5名の方がご来訪くださいましたが、職種はプログラマーや地域活性化の活動をされている方、都市部と地域を繋ぐ活動をされている方、音楽業界の方など、さまざまです。

5/13(金)の日中は、妙高ワーケーションセンターの拠点、ハートランド妙高でワークタイムです。

夕方は、妙高市杉野沢地区の宿泊施設「サン・ヴィレッジまちだ」に移動。温泉に入った後、懇親会を行いました。自己紹介にはじまり、それぞれ取り組んでいる活動、今後取り組んでいきたいことなど、さまざまな話をしました(写真撮影時、マスクをはずしました)。

5/14(土)は、「地域を知ろう」がテーマです。朝、慶応大学でワーケーションを研究されている学生さん2名が合流し、ワーケーションに関する拠点施設や、地域内を訪れ、現在の状況を説明しました。

まず、2022年4月にオープンした妙高高原ビジターセンターと、現在建設中で7月にオープン予定のテレワーク研修交流施設にまいりました。「これは、いいですね!」という声がありました。

 

また、市内は妙高市杉の沢地区、池の平地区、赤倉地区など、現在の観光やインバウンド事情などの地域課題についてお話しました。

その後、ハートランド妙高に移動し、2020年6月から取り組んできたワーケーションの事業説明や、現在の課題感などを共有しました。参加者の中には、これから地域でワーケーションに取り組む方もいて、ご意見や質問をいただいたりもしました。

ハートランド妙高の後は、妙高市の施設「大滝荘」へ移動。いわゆる「中山間地が抱える課題」などについて話しました。また、大滝荘は、変化への対応力を身に付ける、人材育成型のラーニングワーケーションプログラムでも活用していることから、その説明なども行いました。

ここでうれしかったのは、大学生から「今後の働き方」に関する相談を受けたことでした。このような交流は、多様な価値観を持った人たちと、境界を行ったり来たりしながら学ぶ「越境学習ならでは」だと思っています。正解が見出しにくく「安定とは何か」が分かりにくいいま、多様な働き方をされている参加者の方々からの声が、大学生のみなさんの役に立っていたらいいなと思いました。

大学生に限らず、地方で働く人たちの「価値観や働き方」に触れることで、ひょっとしたら、「いまの仕事や働き方は、このままでいいのかな?」のように、改めて、いまの働き方を振り返ったり、価値観が揺さぶられることもあるかもしれませんよね。

また、実は、妙高市は大学生などに向けた「スポーツ合宿の郷」です。大学生のお一人は以前陸上部で、妙高に合宿に来られたそうです。こういった「地域を通じた関係性」もうれしいですね。個人的には今後、妙高を仕事や合宿、オフサイトミーティングで行き来できるような、「ビジネス合宿の郷」にできたらいいなと思っています。

お昼には、「幻のそば」と言われている、そばの原種「こそば」を使った、名物の手打ちそばと、ちょうど山菜の季節であることから、山菜料理をいただきました。

 

イベントを終えて感じた「ワーケーションのこと」

以上が、今回のMYOKO WORKATION WEEKでした。イベントを終えて、感じたことが2つあります。

1つ目は、「会社員のワーケーション事情」でした。

今回、ご参加いただいた方の多くは、働く時間や場所の裁量が「ご自身にある方」でした。つまり、経営者やフリーランスの方です。会社員の方もいらっしゃいましたが、「会社を休んできた」とのことでした。言い方を変えると、会社員にとってワーケーションは、まだ「ハードルが高い」ということなのかもしれません。

もちろん、コロナ禍前と比較すると、在宅勤務やテレワークはかなり広がりましたし、働く時間や場所の裁量がある方も、ずいぶん増えたと思っています。

一方で、個人の方がいざ「やってみよう!」と思うと、やっぱり、上司や同僚の理解が必要なのだなぁと思いました。

2つ目は、「会社の経費として落とせることの大切さ」でした。

1つ目の「会社員のワーケーション事情」にも通じることですが、実は今回、何人かの会社員の方から「妙高に行きたい!」という声をいただきました。一方で、「上司がOKしてくれればいいんだけれど……」といった声もありました。つまり、「経費で行けるか否か」という点が、大きなポイントになるということです。

5/9にMYOKO WORKATION WEEKへご来訪いただいた日本ワーケーション協会入江さんの取材記事、日本ワーケーション協会に聞いた、ワーケーションのもつ地域活性の可能性で、

「特に法人が実施するなら一番大きな課題は『経費』です。もしワーケーション先に仕事があるのであれば、出張扱いにして経費計上ができますが、そこに仕事がないのであればそれは休暇になるので、一企業の規定ではなく税務署の規定的に経費計上が認められない。なので、観光や遊び目的のワーケーションを法人に提案しても意味がないんです。大前提、それは経費で落とせないので。だからこそ、法人に来て欲しいのであれば、経費が出せて、費用対効果の明示もしやすい、会議型や研修型といったプランを作るべきではないかなと思います。

出典:日本ワーケーション協会に聞いた、ワーケーションのもつ地域活性の可能性 | Livhub

と指摘しています。

もちろん、旅費交通費を個人で負担すれば、今回のイベントでも仕事自体はちゃんとできましたし、参加もできなくはないでしょう。けれども、「叶うなら、会社の経費で行きたい」というのが、正直なところだと思います。

また、先般お話を伺った会社員の方は、「在宅勤務でワーケーションができなくはないけれど、周囲に伝えると何かと気をつかうので、ワーケーションに行く場合は個人で行く場合が多い」とおっしゃっていました。

そういう意味でも、これからも「会社の経費で行けるぐらい、価値ある内容」かつ、「周囲にちゃんと話ができる内容」にしていきたいなと思った次第です。

他方、やはり、さまざまな職種やお立場のみなさんとの交流は純粋に楽しいですね。知見も広がります。また、地域の実情や課題をテーマにみなさんとお話できたことは、思考がとても深まりました。「楽しかった」という声もいただきましたし、企画側としても「また、やりたい!」と思いました。

というわけで、改めまして、この度ご来訪いただきましたみなさま、ありがとうございました。引き続き、妙高ワーケーションセンターをよろしくお願いいたします。